雪村周継
SESSON Shukei, 生歿年不詳(室町時代末期に活躍)
室町時代末の画僧。常陸国部垂(茨城県常陸大宮市)に生まれる。号は舟居斎、鶴船。佐竹氏の一族。正宗寺で画僧となり、中国の院体画や関東水墨画の様式を学んだ。50代半ば頃、会津に短期間滞在した後、小田原に転居し、鎌倉にも赴く。この間に様々な作品に接し、独創的な自己様式を確立したと思われる。60代半ば頃、再び会津に赴き、最晩年には三春(福島県郡山市)に隠棲。作品は独特のフォルムと動的な表現が特徴で、山水、花鳥、人物すべてに長じ、個性的な作品を遺した。
《山水図》 Landscape
室町時代紙
本墨画・軸装
27.6×59.2cm
戸方庵井上コレクション
岩の上に三人の人物が佇み、右上には外暈(そとぐま)であらわされた月から雁の群れが孤を描きながら飛来している。岩の下には重なりあう屋根が見え、左にもふたりの人物と屋根が見える。その上に月の光があまねく降り注ぎ、ひたひたと秋の夜の冷気が画面に満ちている。右端にわずかに見える墨の濃淡や、左端の不自然な土坡の切れ具合から分かるように、本来この作品は画巻の一部であったらしい。昭和44年(1969)に記された箱書きによると「瀟湘八景雪村筆図巻 今為四幅 是其一也」とあることから、少なくともその時点で断簡は四幅あったことが分かる。現在、本作品以外に2点が確認され、そのうちの1点が当コレクションに収蔵されている。因みに瀟湘八景(しょうしょうはっけい)とは、中国の洞庭湖(どうていこ)にそそぐ瀟水と湘水の周辺の名勝に取材した八つの景色を描いたもので、水墨山水画の好画題として多くの画派によって描かれている。図様から本作品を「洞庭秋月(どうていしゅうげつ)図・平沙落雁(へいさらくがん)図」、もう一方の《山水図》を「山市晴嵐(さんしせいらん)図」とする解釈もある。 雪村の瀟湘八景図は数点が伝わり、その成立には牧谿(もっけい)や玉澗(ぎょくかん)の影響がみられるが、本図には雪村画にある簡略な構図、とそれに由来する一種の明快さを認めることができる。