当館ロゴタイプのデザインは、1998年に磯崎新の設計で現代美術棟が増設されたタイミングに合わせ、日本を代表するグラフィックデザイナー・田中一光によってデザインされた。この不世出のデザイナーが晩年に手がけた仕事のうちの一つであり、当館の印刷物に用いられるほか、当館建築の正面入口、さらには本ウェブサイト内にもあしらわれている。磯崎の当館建築に関するコンセプトが立方体、グリッド(格子)であったことに呼応するかのように、「群馬県立近代美術館」の9文字が正方形に配されたデザインも存在している。
田中 一光(たなか・いっこう)1930-2002(昭和5-平成14)
奈良市に生まれる。京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)図案科卒業。鐘紡紡績、産経新聞大阪本社、ライトパブリシティを経て、1960年には日本デザインセンターに参加し、63年に独立。73年に渋谷PARCOとほぼ同時にオープンした西武劇場(のちのPARCO劇場)のグラフィックデザインを手がけ、75年には堤清二(辻井喬)率いる西武流通グループ(後のセゾングループ)のクリエイティブディレクターに就任。バブル期に向かう80年代にかけて渋谷・池袋・六本木を拠点としながら日本の文化的な消費生活を先導したセゾングループの戦略の中で、一つの中核を担った。田中のデザインによる無印良品、セゾンカード、LOFTのロゴタイプや西武百貨店の包装紙は、2022年現在も使い続けられている。ポスターの代表作に「第八回産経観世能」(1961)、「Nihon Buyo UCLA」(1981)など。ほかによく知られた仕事として、土門拳『文楽』(1972)のエディトリアルデザインやファッション雑誌『流行通信』のロゴデザイン(服部一成のデザインに変更される2002年まで使われた)、つくば科学万博'85のシンボルマーク、「光朝」(田中独自の明朝体で株式会社モリサワの現行フォント)などがある。「サルヴァトーレ・フェラガモ展:華麗なる靴」(1998、東京)のポスターデザインで第1回亀倉雄策賞を受けるなど、数多くの賞を受賞。2000年に文化功労者。