主な収蔵作品

ピエール=オーギュスト・ルノワール

Pierre-Auguste RENOIR, 1841-191

リモージュに生まれ、10代前半に陶器の絵付け職人の徒弟となる。1844年よりパリに移り、61年秋グレールのアトリエに入り、モネ、シスレーと知り合う。62年エコール・デ・ボザールに入学。60年代にはクールベに影響を受けた作風を示す。60年代の終わりから70年代にかけて、モネとともに印象主義の画風を確立する。80年代にはタッチによる画面構成から線描重視へと回帰し、アングルやラファエロのデッサンを研究して、古典主義的な作風を示す。さらにロココ様式にも学び、自然の中の裸婦という普遍的な主題において、印象主義時代に培った光や大気の透明感のある豊穣な色彩表現と、量感や触感を感じさせる人物表現の融合をはかる。98年より南仏のカーニュに住み、同地で歿する。

《読書するふたり》Couple Reading

読書するふたり

1877
油彩・カンヴァス
32.4×24.8cm

1877、78年頃のルノワールの人物画の例にもれず、本作品でも衣装のレースや布地などの質感が緻密で微妙に変化するタッチの集積によってあらわされている。なかでもひときわ目を引くものは、ルノワールが「私が好きなのは肌だ。ピンク色で血のめぐりのいいのが見える若い娘の肌」と語った少女の肌である。少女の頬に透明感のある線状のタッチが下の色を透かして見せながら重ねられ、あたかも内側から光が発しているかの効果を示す。描かれている二人はモデルのマルゴと、ルノワールの弟エドモンである。同じ時期にマルゴが本作品と同じポーズをとったより大きい単独像があり、この作品はそのヴァリエーションであるようだ。人物画を最も得意としたルノワールは、親しい友人たちをモデルに群像やカップルの間の親密なコミュニケーションの場面を好んで描いており、マルゴとエドモンは、ルノワールのパトロンであるシャルパンティエ家を飾る76年作の2点一組の装飾画でもモデルとなっている。マルゴは75年からルノワールのモデルになり、79年に亡くなるまで、《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの日曜日のダンス》(1876)、《帽子店にて》(1878)、《ショコラのカップ》(1878)などのモデルをつとめる。ダンスやおしゃれに興じ、洒落た居間でくつろぐ当時のパリジェンヌの生きる喜びこそ、ルノワールがこまやかに感じ取り、またいかにして描くか探求し続けた対象に他ならない。