円山応挙
MARUYAMA Ōkyo, 1773-1795(享保18-寛政7)
《青鸚哥図》 Blue-green Parakeet
絹本着色・軸装
71.0×32.0cm
戸方庵井上コレクション
江戸初期に活況を呈した狩野派や土佐派が一段落を迎えた頃、新しい絵画様式を求めていた人々の前に現れたのが、応挙の写生画である。応挙の作品は、写生をもとにしながら装飾性をあわせ持ったわかりやすいものであり、たちまち人々の熱烈な支持を受けた。
応挙の写生画には、濃彩による細密描写で当時の日本画壇に衝撃を与えた沈南蘋(しんなんぴん)の影響があったともされる。本作品は、その箱書に大徳寺孤蓬庵(こほうあん)に伝来した沈南蘋の作品を模したとあり、確かに他の応挙作品には見られない画題であることから、注目に値するものといえよう。画面左から延びる枝の中ほどにとまるインコは、応挙の描くものにしては珍しく鋭い目つきをし、金泥や朱によって鮮やかに彩られている。しかしながら南蘋派の特徴とされる質感表現には乏しく、むしろ、雨に打たれでもしたか、しっとりと葉を垂れる杉枝になじむような、抑えた表現がなされている。たとえ箱書のとおりに本作品に南蘋あるいはその流派の原画があったとしても、本作品は、応挙ならではの感性が色濃く反映されたものととらえられよう。