主な収蔵作品

ロベルト・マッタ・エチャウレン*

Roberto MATTA Echaurren, 1911-2002

チリのサンティアゴに生まれる。同地の大学で建築を学んだ後、1933~34年大西洋航路の商船で働き、ヨーロッパ各地を放浪しながらパリへ渡る。パリでは36年までル・コルビュジェの事務所に勤める。ガルシア・ロルカとダリを通じてアンドレ・ブルトンを知り、シュルレアリスム運動に参加。38年「シュルレアリスム国際展」に出品する。42年ニューヨークのピエール・マティス画廊で最初の個展を開催。48年シュルレアリスム・グループを除名されるが、その後もこの運動後期を代表する作家として評価された。

《ルゥ・デュ・フゥ》 Lou du Fou

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1991
油彩・カンヴァス
200.0×270.0cm 

宇宙空間を思わせる神秘的な青と黒の空間に、星や星雲のように白い光が一面に散乱している。これを背景として、1940年代からのマッタ作品に多く現れる、高速で進む光のような白い線や奇妙な人物めいたものが描き出されている。これは、オートマティスム(自動記述法)により、 マッタが自らの心の深淵から引き出した世界を描いたものである。
オートマティスムとは、マッタが絵画を始めた契機となったシュルレアリスムの作家たちが発明した技法であり、無意識の作用によって霊媒のように筆を動かして表現するものである。マッタはこの技法を一つの手段として利用することにより、50年以上にわたって独自の理論を構築し、表現しつづけている。
デュシャンにより存在や空間概念を表現する方向性を得たというマッタの芸術の原点は、「目を閉じたまま見る」ことである。その基本的な作品世界は、多少の変遷はありながらも常に変わることなく、知覚できないものを形作ろうと進入し、喚起し続ける茫漠とした無意識の世界なのである。