主な収蔵作品

伝蛇足

Attributed to JASOKU, 生歿年不詳(室町時代後期に活躍)

室町時代後期の画家。「蛇足」は越前朝倉氏の家臣の家に生まれた画家・墨渓を祖とする曾我派の画家が代々用いた号で、本図の画家は二代目の夫泉(曾我)宗丈と推定されている。宗丈は1491(延徳2)年頃の大徳寺真珠庵襖絵の筆者とされ、曾我派の代表的な画家として知られている。墨渓と同じく一休宗純に参じ、1512(永正9)年以前には没したという。当館所蔵の「山水図」にある「赤蠅」印のある作品も、作風より真珠庵襖絵の画家である蛇足(宗丈)の作品と考えられている。

《山水図》 Landscape

山水図

室町時代
紙本墨画・軸装
(右)49.6×41.8cm
(左)49.8×41.5cm
戸方庵井上コレクション・重要文化財

秋景と冬景をあらわしたこの作品は、本来春景と夏景を加えた四幅からなる四季山水図のうちの二幅にあたる。残念ながら春景と夏景は大正の震災で焼失している。
画面中央左寄りに山と樹木を配し、遠景に二隻の帆船、手前に船を引く漁師たちの姿を描いた、右幅が秋景、雪を頂いた山、漕ぎ出す船の右に茅屋を、左には停泊する帆船を描いた左幅が冬景にあたる。
筆数を押さえた簡潔な画態、蕭条とした余白の広がりは、大徳寺真珠庵客殿上間襖絵《山水図》に極めて近い作風を示す。この襖絵は、古来より曾我蛇足作と伝えられるが、「蛇足」は曾我派が代々用いた号である。近年では、曾我派二代目の夫泉宗丈をその作者にあて、本《山水図》二幅の作者を同一人物とする説もある。しかしながら、宗丈と本図に捺される「赤蠅」印との関連は明らかでなく、作者の特定を困難にしている。ともあれ、本作品は、周文画からの多様な展開を示した15世紀末に室町水墨画の中にあって、周文画にある「幽寂」「枯淡」といった優れた表現を受け継いでいるといえよう。そして曾我派水墨画の作例として、本作品は極めて重要である。