バーバラ・ヘップワース*
Barbara HEPWORTH,1903-75
《球体のなかのうねり》Helicoids in Sphere
*画像はありません。
1938
チーク材
高さ22.0cm
ヘップワースは1930年代、フランスを中心とする大陸の構成主義に影響を受け、さらにナチズムの高まりにより、ロンドン在住のヘップワースの周辺に、ナウム=ガボ、モンドリアンら大陸からの亡命作家が集まったことにも刺激を受け、楕円、中空の円筒、中空の半円形などの簡潔な幾何学的形態の可能性を追求している。特に37年から38年にかけては、作品は題名の通り、半球、円錐、くぼみなど幾何学的な形態に集約されている。
そのなかの一つである本作品では、見る角度を変えていくと、底部が細く上に広がっていく形から、円をくぼませたような菱形に近い形へ、さらに円盤形と、作品の形やヴォリュームおよび周囲の空間との干渉作用が連続的に変化し、球面と曲面の組み合わせが生み出す思いがけないほど複雑な空間のねじれがあらわれる。しかしながら、球体とその内側に入り込んだ空間との間のバランスにも充分な注意が払われ、またチーク材の木目が中心に向かって描く同心円とあいまって、広がりと集中という球体のバランスは全体として失われてはいない。ヘップワースはこの時期に《球体の中のうねり》と題する作品を本作品も含め3点制作しており、幾何学的形態のもつ連続性や求心性を保ちつつ、ねじれや螺旋の動きを与えることによってより豊かで、有機的な形態への脱皮を試みていることがわかる。