主な収蔵作品

フランシスコ・デ・ゴヤ

Francisco de GOYA, 1746-1828

版画集『妄』 全22点のうち No.20「瞬間の妄」

瞬間の妄

版画集 『妄』 Folly
1815-24頃(1877刊行)
エッチング・アクアチント・紙

No.20「瞬間の妄」Punctual
21.6×32.7cm

この版画集は、「聾者の家」の壁に描かれた連作「黒い絵」と同時期に制作されたと推測され、また「黒い絵」との共通点も多くの研究者が指摘するところである。ある種の黒い祝祭性とでも言うのであろうか、なにかフェリーニの映画に出てくるサーカスの場面のようなカーニヴァル的空間を、ゴヤのこころの奥底に巣喰う闇の中の世界としてユーモラスに描いている。
この二作品はいずれも版画集『妄』の増補分である。この増補分は、マドリードで二度、パリで刷られている。初刷りには、"Madrid Lazaro"と記されヴァーニッシュ・アクアチントで刷られたものと、ごく薄い和紙と羊皮紙にダーク・アンバー・インクで刷られたものがある。パリ版は、フランソワ・リエナールによって、1877年に刷られたことが確認されている。本二作品はこのパリ版である。
二作品はそれぞれ下部にフランス語訳付きのスペイン語の詞書きが添えられている。それは、20番「サーカスの女王」、21番「民衆のための他の掟」と訳すことができる。それぞれに当初『諺』というタイトルで出版された18点に勝るとも劣らぬ、祝祭的アナキズムとグロテスクな諧謔(かいぎゃく)に満ちた作品である。

版画集『妄』 全22点のうち No.21「獣の妄」

獣の妄

版画集 『妄』 Folly
1815-24頃(1877刊行)
エッチング・アクアチント・紙

No.21「獣の妄」Animal
21.4×32.3cm