展示詳細

コレクション展示:井上有一 東京大空襲

 今回の展示では、書家・井上有一の凄惨な体験から生まれた作品《東京大空襲》を展示します。井上有一の没後40年、かつ終戦から80年となる今年、書を美術の視点から読み解き歴史に迫ります。
 井上有一は大正5(1916)年に東京の下町で生まれました。東京府青山師範学校(後に東京第一師範学校、現在の東京学芸大学)を卒業して、東京市本所区にある(現在の東京都墨田区)横川尋常小学校(後の横川国民学校、現在の横川小学校)の小学校訓導(教諭)となります。
 第二次世界大戦中の昭和20(1945)年3月10日未明、300機を超えるアメリカのB29爆撃機によって、ナパーム弾などの焼夷弾を用いた、大規模で無差別な戦略爆撃が東京の下町に対して行なわれました。死者・行方不明者数は10万人を超える、いわゆる東京大空襲です。当夜、横川国民学校で宿直をしていた井上はこの空襲に遭遇 し、翌朝、おびただしい死体の中から仮死状態で発見されました。彼は奇跡的に生き延びましたが、一夜にして横川国民学校だけで千人以上が死に、なにより卒業式のために彼が疎開先から連れてきていた、6年生の生徒8人もこの時亡くなっています。
 その日から、彼は東京大空襲の惨状をいつか表すことを自らに課して、小中学校で教職を続けながら書の前衛的表現を追究していきます。定年退職後、東京大空襲から33年後の昭和53(1978)年、《東京大空襲》33点と《噫横川國民學校》3点を制作しました。《東京大空襲》は全点同じ内容の詩(七言絶句)の形式をもつ、40日間で500枚ほど書いた中から選び出された33点で、そのうち30点が当館の所蔵になっています。

コレクション展示作品目録(展示室7)(PDF416KB)

会期
2025年7月19日(土)から8月31日(日)
開館時間
午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日
月曜日(7月21日、8月11日は開館)、7月22日(火)
会場
展示室7
観覧料
コレクション展示のみ
一般300円、大高生150円
20名以上の団体割引料金 団体一般240円、団体大高生120円
注:中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料