建築家 白井晟一 精神と空間
白井晟一(1905-1983)は、銅造りの家柄である白井伸銅の当主白井七蔵の長男として京都に生まれました。12歳の時、父親を亡くし、姉の嫁ぎ先である、日本画家近藤浩一路のもとに引き取られました。学問としての哲学に興味を持ち、姉の勧めで進学した京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)卒業後、哲学を学ぶためドイツに留学します。帰国後、義兄近藤浩一路の自邸設計を手伝ったことから建築の道へ入り、その後、木造住宅建築や浅草の善照寺、佐世保の親和銀行といった、機能主義、合理主義を軸に展開した戦後日本のモダニズムの潮流とスタンスを置いた建築作品を発表していきます。
20代後半ドイツに留学した白井は、1928年から33年のヨーロッパにあって独自の教養を身につけていきます。当時世界は全体主義への流れの中にあり、近代は輝かしいものではなく、ハイデルベルクやベルリンで学んだカントやディルタイ、ヤスパースやフッサールの哲学はその近代を理解し対峙する手立てとなり、加えて幼児に経験した禅と書がその独自性を肉づけし、そして壮年期に入って、白井は顔眞卿を師として本格的に書と取り組んでいきます。
本展では、白井晟一の建築作品に関連する写真やドローイング、模型、書、装丁、エッセイなどを通して、これまで孤高と言われてきた白井晟一の全貌を紹介していきます。
特に今回始めて紹介される、懐霄館や呉羽の舎などの、白井晟一建築研究所の原図面は、CADで作成されるようになる以前の鉛筆で描かれた図面では、最も美しい図面のひとつです。
同時に、畠山直哉(横手興生病院)、野村佐紀子(虚白庵)、河田政樹(善照寺)の写真作品、大畠裕(湯沢酒造会館四同舎)のフロッタージュ、野又穫(親和銀行東京支店、ノア・ビル)の立体作品、鬼頭健吾(奥田邸)、佃弘樹(旧松井田町役場)、竹村京(白井晟一の肖像)の平面作品といった、現在の作家たちが今日的視点から解釈した白井晟一を主題とする美術作品も展示します。
- 会期
- 平成22年9月11日(土)から11月3日(水・祝)
午前9時30分から午後5時(ただし入館は午後4時30分まで) - 休館日
- 毎月曜日
- 会場
- 群馬県立近代美術館 展示室1
- 観覧料
- 一般:800(640)円、大高生:400(320)円
注:かっこ内は20名以上の団体割引料金
注:中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料
注:10月28日(木) 群馬県民の日は無料 - 主催
- 群馬県立近代美術館
- 協力
- 白井晟一研究所
- 企画協力
- 株式会社アートプランニング レイ
- 関連事業
- 白井晟一シンポジウム
学芸員による作品解説会