コレクション展示:生誕150年 小室翠雲
小室翠雲は明治7(1874)年、栃木県館林町(現群馬県館林市)に生まれた南画家として知られます。精力的な作画活動とともに、文展や帝展の審査員や日本南画院同人、そして帝室技芸員などといった美術界の要職を歴任し、南画の振興を目指した日本南画院や、南画鑑賞会で中心的なメンバーとして活躍しました。
江戸時代に広く大衆に愛好された南画は、明治になるとフェノロサによる批判から「つくね芋山水」と揶揄され、衰退していきます。しかし、明治末頃には西洋的な価値観によって再び見直され、新しい南画を模索する動きが起こりました。南画をとりまく振幅の激しい情勢の中で、「新派」の画家や「新南画」と対立的に語られ、保守的な「旧派」の代表とされる翠雲ですが、彼の作品からは、伝統に甘んずることなく新たな表現を追求していたことがわかります。明澄な彩色が印象的な《春雨蕭々(しゅんうしょうしょう)》では、展覧会場に映える大画面に奥行の浅い明快な構図、雨足を描くなど写実的な表現が見られます。伝統的な南画を基礎に、現実感に富む画風を確立した翠雲は、他画家たちに多大な影響を与えました。展覧会や美術団体といった近代の新しい手段、場を積極的に活用し、「旧派」を率いた彼はまさに近代の、そして最後の南画家であったといえるでしょう。自覚的に南画家として在り続けた翠雲の作品をご堪能ください。
コレクション展示作品目録(展示室7)(PDF500KB)
- 会期
- 2024年7月13日(土)から8月25日(日)
- 開館時間
- 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 休館日
- 月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)
- 会場
- 展示室7
- 観覧料
- コレクション展示のみ
一般300円、大高生150円
20名以上の団体割引料金 団体一般240円、団体大高生120円
注:中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料