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本県ゆかりの作家たち

山口薫  YAMAGUCHI Kaoru,1907-1968
山口薫《紐》
《紐》
Cord

1939(昭和14)
油彩・カンヴァス
100.0×80.0cm

 この作品の描かれる2,3年前から、山口は写実を離れ、 内面の表現に向かうようになり、抽象的な傾向を強めていく。しかし、決して純粋抽象にいくことはなかった。 彼の身内にあって深い詩情を呼びさます身近なものへの愛着と、近代的な造形理論を結びつけて、抽象と具象の交錯する中に 日本的な抒情を滲ませた様式を確立していくのである。
 この作品も、凧のしっぽにつけられた包紐が何気なく結ばれているのに興味を惹かれて生まれたものだという。 的確に置かれた黒によって一層みずみずしくひろがる朱赤の上に、手重りしそうに絡み合う紐の塊を運んでゆったりとたわむ曲線と 水平に広がる伸びやかな直線が、大胆な対照を見せながら見事な均衡を保つ。
 それでいながら、いつしか私たちの視覚は、見えない境界をはさんで二重に重ね合わされた抽象的な空間と具象的な空間の二つの世界を、 果てしなく行きつ戻りつするかのような眩惑感にとらわれる。知と情、澄明と混沌、来世と現世・・・・。 対峙するさまざまな概念を内包しつつ、画面は古典的な静謐さを湛えて、快いリズムを響かせる。自由美術家協会第3回展に出品された山口の初期の代表作である。


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