群馬県立近代美術館
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コレクション
- 主な収蔵作品

本県ゆかりの作家たち

山口薫
YAMAGUCHI Kaoru, 1907-1968

《花子誕生》
Birth of Hanako

1951(昭和26)
油彩・カンヴァス
100.0×80.0cm

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 山口薫が深く愛した故郷、箕輪村(現在の高崎市箕郷町)は、榛名山の南山麓に位置する。故郷で過ごした幼い日々の思い出や、そこに広がる田園風景は、山口薫に豊かなモチーフを提供し続けた。《花子誕生》もまた、故郷との繋がりを示す作品であり、同時に、子供や家族への愛情という、やはり山口薫が生涯描き続けたテーマが重ね合わされている。  
第二次世界大戦末期、山口薫は箕郷に疎開して実家の農業を手伝う。この作品は、そのとき世話をしていた牛が、のちに子供を産んだ際に描かれた。  
今やっと立ち上がったばかりの子牛の背中を優しく舐める親牛の姿。そこからは、親牛の子牛に対する愛情だけでなく、それを見つめる作者の暖かい眼差しが伝わってくる。また、三人の子をもつ親となっていた山口薫にとって、この作品は自分自身の子供に対する思いを投影したものでもあった。  
牛の親子の背景は、赤や白、黄、青などの色面によって抽象的に構成され、牛小舎を満たす親密な空気をあらわしている。そこに射し込む陽の光に「敗戦のみじめさ」を込めた、と山口薫は語っているが、必死に立ち上がろうとする子牛の姿は生命力にあふれ、むしろ戦後の復興への意志が表されているように思える。  
山口薫にとっても、この作品は戦後の活躍の幕開けとなったのである。