群馬県立近代美術館
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コレクション
- 主な収蔵作品

本県ゆかりの作家たち

大澤雅休 
ŌSAWA Gakyū, 1890-1953

大澤 《黒岳黒谿》
Black Mountain, Black Valley
1953(昭28)
紙本墨書・二曲一隻屏風
136.0×136.0cm
大澤イヨ氏寄贈

 本作品は委嘱作品として制作された大澤雅休の遺作だったが、日展出品を拒否された。「画」に近い前衛的な作品と見られたことが理由だった。雅休の主宰した平原社員たちの重ねての要請にも関わらず、この作品が展示されることはなかった。  
戦後まもなく、書家は書を造形表現としてとらえはじめる。中でも革新的な作家たちは、1950年代初頭にかけて、文字の点、線、動きなどの造形要素のみを抽出して紙面構成をはかった。雅休もこの時代に制作した。しかし雅休を、書の解体を試みた作家の一人としてとらえるのは誤りである。雅休はそもそも文学者であり、自らの内にある文学を表現する一つの手段として書に近づいた。雅休は革新的な運動に惑わされることなく、書を文字を書く場としてとらえつづけた。  
本作品を「画」とみる要因ともなったであろう墨の飛沫は、雅休のほかの作品でも展開されている。この飛沫は、雅休の創造のエネルギーを伝えこそすれ、決して線の筆力と美しさを損なわない。本作品は、雅休と深い信頼関係にあった棟方志功が目撃した、字に命を乗せるかのように書く雅休の姿を思い浮かばせ、雅休が志功の芸術を賞して語った「懐抱の一抹をもあとに残さぬことを目ざす至境」を伝えるものといえよう。